美容師になりたての頃、正直に言うと、技術のことしか頭にありませんでした。
カットがうまくなりたい。カラーで驚かせたい。
とにかく「できる美容師」になりたかったんです。
ある日、長く担当していたお客様に言われました。
「先生、今日もありがとう。」
その瞬間、少しだけ違和感があったんです。
僕は先生ではない。技術を教えているわけでもない。
でも、その方は本気でそう呼んでくださっていました。
帰り際に、その方がぽつりと。
「ここに来ると、ちょっと元気出るねん。」
そのとき初めて、
ああ、美容室って髪だけじゃないんやなと思いました。
それから僕は、技術だけを磨くのをやめたわけではありません。
でも、「今日ここに来てよかったかな」という視点が、
いつも頭のどこかにあります。
20年以上経った今も、
僕はたぶん“先生”ではありません。
でも、誰かの少しの支えになれていたら、それでええのかなと思っています。


