「今日、誰にも褒められてないねん」
あるお客様が、椅子に座った瞬間に言いました。
「今日、誰にも褒められてないねん。」
髪型のオーダーより先に出てきたその言葉。
たぶん、その日はそれが一番大事だったんやと思います。
カットの途中、鏡越しに言いました。
「今日の服、似合ってますよ。」
ほんの一言です。
でもその方は、ちょっと目が潤んでいました。
美容師って、髪を触っているようで、
実は気持ちを触っているのかもしれません。
派手な技術より、
その日のその人に合う言葉。
美容室が“美容の場所”だけだったら、
きっと20年も続いていません。
僕は今も、
鏡の向こうの表情を見ながら仕事をしています。


